ふらふらと違う教室を転々と巡り、侑里や莉華とおしゃべりをしてからチャイムに合わせて教室に戻った。
どうやらもう帰ったようだ……

まだ先生の来ない教室は騒がしい。
宿題を写す人。
プリクラを貼る女の子は一生懸命。
スマホとにらめっこをする人。
卓球のボールで遊ぶ男子達はいったいどこからそれを持ちだしたのか。

チラッとわたしは輝空くんの背中をのぞくと、一人で下を向いている。今がチャンスと、わたしは駆け寄った。

「なにしてるの?」

肩に手を乗せて話しかけたわたしの声に、輝空くんは読んでいた漫画を閉じた。

「びっくりした」

リアクションは小さいけど、ほんとに驚いた様子の輝空くんが見れてちょっぴり嬉しくなる。
さっきは苛立った感情でいっぱいだったわたしも、ふたりで話しているうちにいつのまにか気持ちが晴れ模様。今日のことは気にしない。

そんな単純な締めくくりをしたことを失敗だったと気づいたのは、後になってからだった。