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なんだかんだ、輝空くんは頭がいいようで。テストの答案用紙が返される度によく頑張ってるね‼と教師たちに誉められている姿を見る。


「でも国語はだめらしい」

教室の隅から、なかなか開かないメロンパンの袋に苦戦中の寧音の後ろ側にいる男子集団をチラッと横目で見ながら、わたしは生姜焼き弁当をつついた。

「そうなの?数学は凄かったじゃん‼」

咲がはさみで開けてくれたメロンパンを
美味しそうに頬張る寧音の姿は、例えるなら森のリス。

その時、穏やかな昼休みのムードの中にガラガラッとドアが開く音が響いて商業科側の四人組の女子生徒が入ってきた。

「ちょっとちょっと‼私達も混ぜてよ♪」

甲高い声と華やかな着こなしの制服に目がいく。四人が声をかけたのはトランプをしている集団。

「ちょっと、歩舞……」

不安そうに声をかける寧音を無視して、わたしは平然と生姜焼きを食べ続ける。

「なによあれ‼ねぇ、歩舞?」

「ん……ごちそうさま」

わたしはお茶を飲んで暗い感情を流しこむ。
ここからは、楽しそうにトランプをするその集団がよく見える。その中で笑う輝空くんの姿も。