「あんなに授業中、言うこと聞かずにぺちゃくちゃ騒いでるのになぁ」
日本史教師の銀ちゃんは、わたしに返したテストの得点を見て眉間にしわを寄せて不思議そうに首を傾げた。
「何点だった!?」
席につくと、興味津々にわたしの点数を聞いてくる輝空くん。
今回のテストで、わたしと輝空くんは勝った方がジュースをおごる賭をしていた。
「そっちから言えよ~」
「えー‼じゃあ一斉に言おうよ」
「わかった」
せーの……
「78点……って、輝空くんも言ってよ‼裏切ったーッ!?」
テストを奪い取ろうとするわたしを、赤いマントを振る闘牛士のようにギリギリでかわして輝空くんはニシシッと笑う。
「いいじゃん、結局俺より上なんだから」
え!?何点だったの?と喜びながら言うと輝空くんはしぶしぶ教えてくれた。
英語と古典以外の勉強はあんまり好きじゃないのに、日本史を必死で勉強したのはいつも授業を聞いていないのにテストでは高得点をとる生徒……に、なってみたいなと思ったから。
「まぁ、観点が入ったら俺の方が上かな?」
笑う輝空くんの5点差の答案用紙を睨み、ノートをとらなかった日頃の自分をほんのちょっと悔やんだ。