野球部の勉強会が終るまで咲と図書室にいた。
いつもは寧音もいて3人で行動をする事が多かったから、なんだかんだ咲と二人きりになるのは初めてだった。

どことなく緊張する。
たくさんの本のにぎわう本棚、独特の暖かな空調。常に整理された空間は保健室より清潔感があるような気がする。

「付き合ってどう?」

プリクラをはさみで切り分けながら、咲は柔らかな声をわたしに向ける。少し照れて笑うと咲も微笑んでくれた。

「まだ教室とか、人がいるところで話しかけようとすると緊張する」

二人きりならいつもの自分でいられるのに。

「付き合い始めたころはやっぱりそうだよね」

あたしもそうだったよ。と、懐かしそうに言う咲は大人に見える。

「直央(ナオ)君と長いよね」

「もうそろそろ一年かな?だからあーちゃん達見てると初々しくてうらやましいよ」

「わたしは咲や寧音の方がうらやましいよ。廊下で普通にイチャイチャしてるとか憧れだし」

でもケンカも多いから。と、咲は笑った。





「せっかくいまから会うのにね。大丈夫?」

「大丈夫。わたしは雨に慣れてるから」

いつの間にかポツポツと振り出した雨を見て心配してくれる咲に、わたしは笑顔を向けた。