わたしと輝空くんのことはいつの間にか所々に広まった。

「鶴見先輩がもう知ってた」

原因はきっと素早い野球部の情報網。
莉華から聞いた話、部内で隠し事は三日ももたないという噂があるらしい。
いったいどこから入手した情報なのかはあえて聞かないことにした。

「やっぱ俺らはいつでも連携プレーがなってるから」

「あんまり自慢になってない」

輝空くんはいつもわたしに笑顔をくれる。
なんだか犬みたいで可愛いと思ってしまうのは、わたしが浮かれている証拠なのかもしれない。



「おばちゃんのただのノロケ話じゃん」

おばちゃん呼ばわりする隣の席の男の子を、わたしは軽く蹴りを入れてからまたやっちゃった、と後悔。蹴り癖はわたしの悪い癖だ。

そろそろ行われる中間テストの前に席替えをすることになり、くじ引きでわたしは窓側の一番後ろの席を取った。それだけでも十分よかったけど、目の前の席が寧音になったことが何より嬉しい。

ただ密かな期待、輝空くんの隣になることは出来なかった。