「ほんとにそれでいいの?」

下を向いていたわたしの顔を、輝空くんはフルフェイスの中からのぞき込む。
一瞬、心の葛藤を見透かされてしまったのかと思って驚いた。

「……後ろ」

乗っていい……?

精一杯、震えないようにこらえながら出した声。
仕方ねぇなぁ。と、笑っている目が見えて涙が出そうになる。

おっきな背中。
こんなに近くに好きな人がいる。気持ちを伝えられたらどんなに幸せなんだろうね。

一年前のこの時期、わたしはまだ輝空くんと出会っていなかった。
思い出はたくさんありすぎて全部は覚えていられないけど、初めて見たホームランはわたしの胸から消えない。輝空くんを知る度甘苦しくなる。

自転車に二人乗りしていたあの頃の二人は一年後、バイクに思いを走らせている。
同じ時の訪れなんてありえないんだと感じた。

形を変えて進んでいく姿。
自転車がバイクに変わったように、わたしの気持ちも強く、強くなった……