小降りの雨では夕焼けも見えない。
いつの間にか左側を歩くことが癖になっていた。
輝空くんはわたしの家の前まで送ってくれた。律儀な坊主だな、A型なのかも。
「じゃあ、風呂入って早く着替えろよ」
バイクにまたがった輝空くんに、うん。と一言頷いた。ヘルメットをかぶる姿を数秒の間、見つめる。
輝空くんは一度振り向いて、じゃあな。と手を軽くあげてサヨナラの合図をした。
キーを回し、エンジンをふかす。
「──……待って‼」
「何?」
輝空くんを止めたわたしは何も考えていなかった。制服の袖をつかむと、輝空くんは何?と尋ねる。
今更、不安がよぎる。
もしここで、わたしの気持ちが伝わらなかったら……。そう思って、言おうとしていた言葉を奥にしまい込んだ
「やっぱいいや、ばいばい」
弱虫……わたしは弱虫だ。
大切な時に前に踏み出せない自分があれほど嫌だったのに、また逃げようとしている。怖いよ、怖いよって。