「歩舞、気持ち落ち着いたら先輩達の応援……行こっか?」

わたしは頷いて、それから荷物をまとめて一度会場を出た。

今日は、人が多い……
どこへ行っても武道館の中は……ひと、人、ヒト。
更衣室は、さっきの対戦相手がいそうな気がして入りたくなかった。廊下は、弓道部や柔道部が入り交じって人であふれていてその場にいたくない。

なら、トイレに。と、逃げ込むと鏡の前で化粧を直す女子高生の姿が並んでいるのが見えて、誰かがわたしが入ってきたことに気づく前に回れ右。
去ろうとした時に一人の女子高生が言った一言が──

“剣道とかつまんなーい‼マジ強制応援とかウザイ‼”

キツイ。
わたしは、あなた達がつまらないと思っている世界を精一杯生きているんだ。
そう言いたかったけど胸にしまう。一人になりたいなぁ……

ぺたぺたと、重たい足がたどり着いた場所は自動販売機ステーションだった。