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3回戦目を終えて、会場の隅に置いておいたジャージのポケットからスマホを取り出すと寧音からメールが届いていた。

【2回戦突破か~★おめでと♪あたしもまだテニス残ってるよぉ】

ジャージで隠して返信を送る……
会場の隅の扉の近くでしばらく何も考えずに座っていた。

ッダーンッ―……パシッ、パシーンッ──……
充実した気勢、床を打つ音──竹刀は強気に鳴いてる。
目を閉じて、それを聞く。

「お疲れ、……歩舞、よく頑張ったね」

声に気づき目を開けると、目の前に美千代がいた。

「ありがと……」

わたしの三回戦目は二本負けだった。相手は紺色の胴着を着たわたしより背の低い三年生。
開始の合図とほぼ同時に引っかけ小手……面へ跳ぶと見せかけ、相手が剣先をあげた瞬間に空いた小手を打つ技。
その一瞬は悔しいけれど、とても綺麗だった。

二本目からの勝負、わたしは動揺してしまった。初太刀を簡単に取られてしまった失態と早く取りかえさなきゃ、と思う焦り。
沼地に足が浸かった。