藤嶋輝空とスーパーで出会って話をして、そこにわたしの想像していた藤嶋輝空はいなかった。

ボール片手に硬派な高校球児?
実物は豚バラ肉を片手にオバチャン根性な高校球児……
バット持ったら命かけて真剣勝負しそう?
ネギ持ったら命かけて良質ネギを選んでいそう……

笑った顔は可愛いくて、卵の割引券をくれて、輝空と呼んでいいと言ってくれた。
……本当にあの人がホームランを打った藤嶋輝空?
いろんな収穫だ。

でも、なんでわたしの名前を知っていたんだろうか──……



***

夏休みが明けた。
剣道の九州遠征のお土産を寧音に渡しに、慣れた足で二組へ向かう。

教室の入り口近くに輝空くんが見えた。
ドアを開けて入るわたし、友達と話し込んでいる輝空くん。お互い声をかけなかった。
なんだか、輝空くんとのスーパーでばったり遭遇事件がまるで夢の中で起こったことのような気がしてきた……