「もう1つは…………、戸丸と容疑者桐谷の子供が智子という事だ。」



「!!!」



宮部はあまりの出来事に言葉を失った。


「その事をあの日俺に話してくれた。どうやら子供が出来た事を知った桐谷はそれ以来姿を消してしまったらしい。元々ギャンブル好きで女好きのどうしようもない男だ。

刺されたときにお前に言わないでくれと言ったのは、ストーカーで殺人犯でもある男の娘だという事実を智子に知られない為だと思う。

娘を思う母の愛ゆえだ。この事は決して開けてはいけない事実。お前も依頼者の気持ちをしっかり汲んでやれ。」


「なるほどね…確かにこれはパンドラの箱のようだ」


宮部が呟くと父親はテーブルに置いてある魔法瓶からお茶を湯のみの注いだ。


湯のみから湯気がたったお茶をズズっと啜ると、眼鏡が一瞬で曇りをたてる。