当時も宮部は父親の公開しないという行動に反感を抱き散々揉めたが、父親は頑なに理由を話さなかった。


ただ一言「依頼者の意思だ」と答えただけ。


「お前のいうとおりだ。実際あの事件は戸丸の娘さんがストーカーに会っていたと証言しただけで裁判で有効な証拠は何ひとつなかった。

もしこのファイルを提出していれば刑も重くなったろう。それに、お前自身戸丸明子から言わないでくれと言われたって言ってただろ?」


宮部も戸丸本人からそれを言われた記憶を鮮明に覚えていた。


戸丸明子が刺された当日、宮部が血まみれの戸丸の傍に駆け寄り戸丸が最後に発した言葉。



『言わないで…お願い…あの子には絶対に…』



「確かに言われたけど、俺には意味がわからなかった。親父はその意味を知ってるんだろ?頼む教えてくれ。」


父親も宮部の強い気持ちに根負けをしたのか険しかった表情から悲しげな表情へと変わっていった。