確かに髭剃りが好きというのはあまり聞いた事がない。


最近では男性でも髭の脱毛を行う時代になっているのだから。


それでも宮部の中では髭剃りは男の大人のたしなみだと考えている。


心身共にリフレッシュをした宮部は身体についた水滴を拭き仕事用のスーツに袖を通す。


「さて、行ってみるか。」


宮部は事務所の戸締りをして、デスクからファイルを取り出すと鞄へしまい車へと向かった。


父親がいるのは館林の隣町にある田園風景豊かな邑楽町という所だ。


辺り一面田んぼばかりの中にぽつんとその老人ホームはある。


もう歳も70を迎えてはいるがまだまだくたばる気配はなく今でも若い女性には口説き文句を言うほどの元気っぷりだ。


ちなみは母親は宮部を産んだ時に亡くなってしまったと聞かされている。