当時も今も、ストーカーに対して実害がなければ本格的に警察は動けないのが実情。


そうなると、結局探偵を雇うなり周りの手を借りる状態へとなってくる。


戸丸明子に関してもそうだった。


当時宮部と父親の2人でこの仕事を行っていたが、いよいよ調査も大詰めという中でこの悲惨な事件が起きてしまったのだ。


宮部もこのような経験があることから今回のストーカー案件についてあまり乗り気にはなれなかったのだろう。


だが、当時の記憶を思い出し、『必ず今度は依頼者を救ってみせる』という強い思いが湧き上がってくるのを宮部本人が感じ始めていた。


宮部はすっと立ち上がるといつもの仕事用のスーツへと袖を通す。


「どっか行くんですか?」


日野がダンボールを抱えながら宮部に問いかけた。