「先輩……ちょっと老けました?」

「そっくりそのまま返すよ……宮崎」


段々と軽くなっていく財布をポケットにしまって、宮崎は高知の隣にしゃがみ込む。

目の前を通り過ぎて行く楽しそうな人達を眺めては、二人同時に深くため息をついた。

そんな二人の前で、和果子は食べ終えたわたあめの棒を袋にしまい、代わりにみかん飴の入ったパックを取り出す。

輪ゴムが取られて勢いよく蓋が開くと、ふわりと甘い匂いがした。

早速和果子が、一つ取って一口齧る。

そっと歯を立てると、飴にくるまれた蜜柑の果肉が柔らかく弾けて、爽やかな果汁が溢れ出す。

幸せそうに顔をほころばせる和果子を眺めて、宮崎が深く息をついて俯くと、高知も同じようにして地面に息を吐いていた。


「二人共、せっかくのお祭りなのに辛気臭いよ?」


“誰のせいだ!”と心の中で悪態を付きながら宮崎が顔を上げると、和果子が笑顔でパックを差し出す。