「どっちでもいいので、早くしてください。物凄く目立ってて恥ずかしい」


不機嫌全開の和果子の声に、二人は慌てて辺りを見回す。

確かに、通り過ぎて行くたくさんの視線が三人に注がれていた。


「「すいませんでした……」」


恥ずかしさに俯いて発した声は意図せず息がピッタリで、二人はお互いの顔を見つめる。

しばらく無言で見つめあった後、諦めたようにため息をついたのは宮崎の方だった。


「わかりました……今回は俺が払いますから、次は先輩が出してくださいね」

「えっ……まだあるの」


渋々財布を取り出した宮崎は、不機嫌な表情のままにわたあめを頬張り続ける和果子に向き直る。


「で、何が欲しいって?」


無言で歩き出した和果子に続きながら、宮崎は財布の中をかき回して小銭を確認する。


「これ!」


打って変わって弾んだような声に顔を上げれば、黄色い幟が目に入った。


「やっぱり夏祭りと言ったら、これは外せないでしょ」


“みかん飴”と書かれた屋台を指差して、和果子が無邪気に笑う。