「これは先輩命令だ。大人しく行ってこい、宮崎」

「先輩なら、つべこべ言わずに後輩におごってください」


今にも火花が散りそうな勢いで睨み合う二人の間で、和果子は驚いたような顔をしている見物客や売り子に愛想笑いを浮かべる。

恥ずかしいほどに目立ちまくっている二人を睨みつけてわたあめを一口頬張ると、ふわふわした柔らかい食感は、口に入れた瞬間甘い余韻を残して消えていった。


「なら、公平にじゃんけんって事でどうだ!」

「いいですけど。先輩、焼きそばの時にも同じこと言って負けてましたよね」


お互いに拳を握り合ったまま、じゃんけんをするか否かで迷っている所に、痺れを切らした和果子が割り込むようにして二人の間に体を押し込んだ。


「おわっ!?和果子」

「和果子ちゃん!?いつの間に」


ずっと近くに立っていたのに気がつかなかったのか、和果子の登場に、二人は驚いて飛び退く。

そんな二人を交互に睨みつけて、和果子はムスっとした顔で口を開いた。