「宮崎!次あれ」
「ほら宮崎、ご指名だよ……」
「嫌ですよ……!次は先輩が行ってください」
役場の中にも外にも、果てはその前の通りにまで、ズラリと立ち並ぶ屋台を前に、元気なのは和果子一人だけで、あとの二人はすっかり疲れきった顔つきをしていた。
「俺はさっきたこ焼きを買わされました。だから次は先輩の番です」
「オレだってそのすぐあとに、フランクフルト買わされたもん」
「いいから行ってきてください」
「嫌だよ。ご指名は宮崎の方だろ」
「そもそも、先輩が和果子の浴衣が見たいって言うから!」
「宮崎だって、満更でもない顔してたくせに!」
立ち止まって睨み合う二人は、見物客だけでなく屋台の売り子達の視線までも一心に集めていて、当の本人達は全く気がついていないが、かなり目立っていた。
わたあめを手に振り返った和果子は、自覚のない二人の元に仕方なく近づいていく。