「マジか……」

「なになに?和果子ちゃんなんだって」


再び身を乗り出してくる高知から、宮崎は逃れるように体をそらす。


「浴衣、着てもいいそうですよ。その代わり、屋台で何かおごってくれるなら」


メールの文面を簡潔に伝えると、高知が嬉しそうに目を輝かせる。


「ほんとに?いやあーやっぱり夏は、祭りと花火と女の子の浴衣だよね!良かったね宮崎、これで浴衣着ないで済むよ」


男物ならいざ知らず、きっと高知は女物の浴衣を着せようとしたに違いないと思えば、和果子がすんなり承諾してくれたことは、宮崎にとって確かに救いだった。

救いだったのだが、屋台で和果子に何かを奢らなければならないということは、女物の浴衣を着て祭り見物をしなければならないのと同じくらいの恐怖でもある。


「和果子、先輩といえども遠慮しませんから、覚悟したほうがいいですよ」


自分の財布を守るために放った宮崎の言葉に、高知がキョトンとした顔で驚きを顕にする。


「え、何言ってるの?おごるのは宮崎の方でしょ」


先輩であることをすっかり忘れて思わず、はあ?と出そうになった声を、宮崎は何とか飲み込んで口を開く。