「先輩、確か去年辺り、これから忙しくなりそうだから、次の休みには帰って来られないかもしれないって言ってませんでした?」

「いやーそれが、思ったほど忙しくならなくて。なんか、自分で思ってる以上に暇になったから、帰ってきましたー!」


高知は、テンション高めに拳を天に突き上げる。


「良かったですね、帰って来られて。先輩、夏祭り大好きですもんね」


まだ青空の気配を残しつつも、ゆっくりと端から夕焼けに染まっていく空を眺め、高知がニカッと笑う。


「村を出てからさ、断然規模も大きくて物凄く盛り上がるようなお祭りをいっぱい経験したんだけど、不思議と地元のお祭りが一番テンション上がるんだよね!」


まるで少年のように無邪気に笑って、高知が宮崎を見やる。


「宮崎だって、好きでしょ?ここのお祭り」

「まあ……嫌いじゃないです」

「素直じゃないなー」


ニヤリと笑う高知から視線を外すと、ジーパンのポケットが微かに振動するのを感じた。