『何を言おうとしたのか、忘れちゃった。』



中学2年の、夏休み最後の日だった。
鈴鹿くんと会った、最後の日だった。



『また、一緒に見てみたいね。』



そう言った鈴鹿くんは私に何も言わずに転校してしまった。


たった一言。
言ってくれたって良かったのに。


引っ越し先を教えてくれたら手紙だって送ったし、電話番号を教えてくれたら電話だってした。

偶然隣の席になって、必然的に話すようになって。鈴鹿くんは男子の中では一番が仲が良かった。


いつも優しくて、笑顔で。
でも一歩だけ後ろから引いて見てるところがあって。


私は鈴鹿くんのこと、–––。