そんな事が重なり私はある日おかしな事をやり始めました

自分の悪口を自分で書くようになったのです

最初はノートに次にトイレに落書きしたり床に書いたりもしました

どうしてそんな事をしたのか理由を言えと言われたら上手く言えません

ただ私だけど私でないような感覚とそれをすると心が楽になるそんな感じでした

ただバレるのはすぐでした

長尾先生という新任の先生が話を聞き家にくる事になりました。
私は怖かった

家族にバレたら怒られる

嫌われる

捨てられる

でも誰にもそんな恐怖は話す事が出来ず

先生と祖父母の話し合いを家のリビングの近くの階段で聞き耳をたてていました。

先生と祖父母のやり取りを細かには覚えていませんが

祖母が泣いていたのだけは覚えていて

私も声を殺して泣きました

不安と恐怖そして安堵からでした

私は祖父母にだけは怖がる事なく甘えたり反抗出来たのは

これがあったからかも知れません

父がサナさんと言う人と再婚する

これを知った時私は不安と期待が入り混じっていました

母親それは私がずっとずっと欲していた存在だったからです

父は私にこう言ったのを鮮明に覚えています。

「お前はどうする?お父さんと行くかここに残るかお前が決めろ」

私は父と当然一緒だと思っていました

祖父母は大好きです

でも私にとって父親は両親はもっと特別でしたから

だから父の言葉が私には悲しかった

お前はいても居なくてもいいそう言われたようにあの頃の私は感じました。
私は父と祖父母の家を出る事を選びました。

この時はこの決断を後に何度も思い出すなんて思いもしていませんでした。
新しい母には連れ子がいました

まだ保育園に通う小さい女の子で涼乃(すずの)という名前だったので

私はすずと呼ぶようになりました。

私と母は私が期待したような母娘にはなれなかった

それにくらべすずは幼いからかすぐに父とも仲良くなり家族の輪に溶け込んでいきました

私だけがその輪に上手く馴染めずにいたんです。

そしてきっと母もそれを感じていたと思います

だから苦しかっただろうしストレスも溜まっていたでしょう
きっかけが何だったのかもう私は覚えていません。

気づくと母に叩かれたり蹴られたり罵声を浴びる生活になっていました。

だけど普段ずっとひどい人ではないのです

優しい時もありました

ただ怒るとそうなってしまう母に私は常に怯えご機嫌を伺い

家から出来るだけ逃げるようになっていったのです

朝6時に起き朝のウサギ当番とか嘘をついて静かに出掛け

学校が開くまでグラウンドで時間をつぶしたり

教頭先生がそんな私に気づき職員室に入れてくれお菓子をくれたりしました。

今思えば学校の先生は再婚を知っていたでしょうから不審な私に気づき初めていたのかも知れません。
そんな時でした

母が引っ越して誰も知らない所に行きたいと言い出したのは

それまでは私の通っていた学校の近くのアパートに住んでいました。

もしかしたら何かあったのかも知れません

でもその当時私は転校を嫌がる勇気もありませんでした

嫌がったら怒られる

殴られるそして捨てられるかもしれない

そう思っていたからです。

私には大事な友人がいました。

松田杏樹(まつだあんじゅ)私はあんじゅと呼んでいました

家庭環境がそっくりだったあんじゅだけには素直に苦しいと話せました

そんなあんじゅと離れる事がとても悲しくて

でもサヨナラを言いたくなくて私はあんじゅに

「またね」

そう言って別れました。

あの時はもうずっと会えないような気がしていたんです
引っ越し先は同じ市内の田舎でした。

近くには何もなく海と山が綺麗な所です

そこで私の新しい生活が始まりました。

そこに引越しても生活は変わりませんでした

母は怒るとやはり殴る蹴るは止まらなかったですし暴言も

前は家に帰るのをギリギリまで伸ばせましたが

新しい学校は毎日集団登校だったのでそれも出来なくなり私にとって毎日が地獄でした
その頃は子供部屋で息を潜めるように生活し家族の様子を伺いながら生活していました。

そして殴られた後や暴言を吐かれた後は声を殺して部屋を真っ暗にして泣きました。

母は私が泣くともっと怒るからです

私が泣くと母は気持ち悪いとよく言いました

だから私はバレないように泣いていた

母からの暴力はある時期から慣れたというかコツを覚えるようになりました

息を止め痛みが遠い感覚になっていくそんなイメージで本当に耐えれるようになっていったのです

それでも耐えられない事もありました

言葉だけは慣れる事も逃げる事もできなかった

死ねばいい

いらない

気持ち悪い

アンタに親戚の人が優しいのは可哀想な子だと思ってるからだ

アンタのせいでお腹の赤ちゃんが死んでしまう

そのどれも私は忘れた事がない

死ねと言われた時どんなに死にたかったか

いらないと言われた時どんなに辛かったか

気持ち悪いと言われた時どんなに悲しかったか

誰も信じれなくなった

死ねない自分を責めて誰か殺しにきてと願った

私が悪い子だから愛されない

ごめんなさいと何回も謝った

母がいない暗闇にずっと呟いていた

きっと母は覚えていないだろう