まだ、世界を澄んだ目で見つめられていた頃。
少女漫画を読み、恋に憧れて目を輝かせていた頃。
きっとあの頃の私なら、こんな日を待ち望んでいたのかもしれないなあ…なんて考えながら、椅子の背もたれに腰掛ければため息をついた。
「康太くんっ、次のグループワークの時私と一緒に行こっ!」
「抜けがけ禁止だよ、私も行きたいっ!」
四人くらいの女の子たちがきゃっきゃと隣の席に群がっているのを横目に、次の授業道具を取り出す。
この学校に入学して早一年が過ぎ、このクラスになって約二ヶ月と少し。そして、この席になって二日が経とうとしている。
まだ二日目なのにこんな疲労困憊になったことが今までにあっただろうか。いいや、絶対ない。
さっきの女子が言っていた。グループワークなんてそういえばあったっけ、なんて。
一年生の頃仲良くなった友達は総じて違うクラスになってしまったから、私は二ヶ月経った今もぼっち生活を満喫していた。
もともとみんなでわいわい騒ぐ人でもないし、緊張して本を読んで過ごしてたら孤立してたってだけで。
教室を移動すれば、既にクラスメイトが仲のいいグループを作って座っていた。自分の席が潰れていたので後ろの方に座ると、丁度良く予鈴が鳴った。
先生は予鈴が鳴り終わるくらいに美術担当の先生が入って来て、教壇の前に立つと今日の課題を提示する。
「では今日は、二人から四人のグループになって題材を選び、同じものを描いてください!」
みんなの描いた絵を楽しみにしていますよ!と顔に書くほどの笑顔で先生がそう言うと、みんなはさっそく必要な道具を出して教室から出て行ってしまう。
私は高校を出たら美大とか、美術系の専門に行きたいと思っていたので、ほかの人がいない方が描きやすいと思って、どさくさにまぎれて廊下に出れば、みんなと反対方向に向かう。
裏庭の方に繋がるこっちの道には、綺麗な花壇があることをみんなは知らないのだろう。
話によれば校長先生と環境美化委員くらいしか見る人がいないらしいから、当然かも知れない。
住んでる世界が違えば見えるものも違うとよく言うし、貧乏と金持ちでは見るものが違う。
見るものが違うから、彼女たちにとってはイマドキスイーツの方が綺麗なのかもしれない。
裏庭に出れば、色鮮やかな花壇と小さな噴水が私を出迎えてくれる。
そこには同じ赤いネクタイをした人はいなかった。運がついている、と心の中でガッツポーズを決める。
「どれ書こうかな」
たくさん植えられた花の数々を見ながら段差に座り込めば、どれを主役にしようかと悩む。
紙の大きさを確認しようと下を向けば髪の毛が前に流れてきた。
私の髪は多分ロングとセミロングの間くらいで、前髪を左分けにしているけれど結構重たい。前まではボブくらいだったけど、最近は顔を隠したくて伸ばしていた髪は、そろそろ貞子を連想させられると思う。
そんな邪魔くさい髪の毛をゴムで括りながら、頭の中でふわふわと浮かぶイメージ、モチーフを構図に起こしていく。
ピンとくるものが見つからなくて思わずため息をつくと、後ろから足音と、さわやかな風を運んでくるような声がした。
少女漫画を読み、恋に憧れて目を輝かせていた頃。
きっとあの頃の私なら、こんな日を待ち望んでいたのかもしれないなあ…なんて考えながら、椅子の背もたれに腰掛ければため息をついた。
「康太くんっ、次のグループワークの時私と一緒に行こっ!」
「抜けがけ禁止だよ、私も行きたいっ!」
四人くらいの女の子たちがきゃっきゃと隣の席に群がっているのを横目に、次の授業道具を取り出す。
この学校に入学して早一年が過ぎ、このクラスになって約二ヶ月と少し。そして、この席になって二日が経とうとしている。
まだ二日目なのにこんな疲労困憊になったことが今までにあっただろうか。いいや、絶対ない。
さっきの女子が言っていた。グループワークなんてそういえばあったっけ、なんて。
一年生の頃仲良くなった友達は総じて違うクラスになってしまったから、私は二ヶ月経った今もぼっち生活を満喫していた。
もともとみんなでわいわい騒ぐ人でもないし、緊張して本を読んで過ごしてたら孤立してたってだけで。
教室を移動すれば、既にクラスメイトが仲のいいグループを作って座っていた。自分の席が潰れていたので後ろの方に座ると、丁度良く予鈴が鳴った。
先生は予鈴が鳴り終わるくらいに美術担当の先生が入って来て、教壇の前に立つと今日の課題を提示する。
「では今日は、二人から四人のグループになって題材を選び、同じものを描いてください!」
みんなの描いた絵を楽しみにしていますよ!と顔に書くほどの笑顔で先生がそう言うと、みんなはさっそく必要な道具を出して教室から出て行ってしまう。
私は高校を出たら美大とか、美術系の専門に行きたいと思っていたので、ほかの人がいない方が描きやすいと思って、どさくさにまぎれて廊下に出れば、みんなと反対方向に向かう。
裏庭の方に繋がるこっちの道には、綺麗な花壇があることをみんなは知らないのだろう。
話によれば校長先生と環境美化委員くらいしか見る人がいないらしいから、当然かも知れない。
住んでる世界が違えば見えるものも違うとよく言うし、貧乏と金持ちでは見るものが違う。
見るものが違うから、彼女たちにとってはイマドキスイーツの方が綺麗なのかもしれない。
裏庭に出れば、色鮮やかな花壇と小さな噴水が私を出迎えてくれる。
そこには同じ赤いネクタイをした人はいなかった。運がついている、と心の中でガッツポーズを決める。
「どれ書こうかな」
たくさん植えられた花の数々を見ながら段差に座り込めば、どれを主役にしようかと悩む。
紙の大きさを確認しようと下を向けば髪の毛が前に流れてきた。
私の髪は多分ロングとセミロングの間くらいで、前髪を左分けにしているけれど結構重たい。前まではボブくらいだったけど、最近は顔を隠したくて伸ばしていた髪は、そろそろ貞子を連想させられると思う。
そんな邪魔くさい髪の毛をゴムで括りながら、頭の中でふわふわと浮かぶイメージ、モチーフを構図に起こしていく。
ピンとくるものが見つからなくて思わずため息をつくと、後ろから足音と、さわやかな風を運んでくるような声がした。