成績が良くて、みんなを引っ張って行くリーダー的存在。
しっかりしていて、友達にも信頼されて、相談にも乗る。
友達が嫌いなわけじゃないけど、どうせ人なんて簡単に裏切るって思ってた。
家でも、学校でも、「いい子」の私。
そんな毎日が普通だと思っていた。
友達の話に合わせて、きちんと勉強して、家族にもいい顔をしていれば。
それだけでいいんだと思っていた。
けど、突如私の心に入り込んできた君。
最初は本当に何なんだよって思った。
何も知らないくせに言いたい放題言って。
でも君は、私の日常を一変させて、本当の私を見てくれた。
本当の心を隠した私に君は手を差し伸べてくれたんだ。
毎日友達とバカやって、ちょっとだけルール破って。
周りの目なんか気にせずやりたいことだけする。
先生に目つけられて。
制服を着崩して、茶色の髪にしているだけで不良だと言われる毎日にうんざりしていた。
人なんて外見が全て。
特に女なんてみんなそうだ。
適当に付き合って、飽きたら別れての繰り返し。
俺がいくら本気になったって・・・・・・
そんな時突然俺の前に現れた君。
どこか自分と似ている気がした。
そんな君は俺の心にすっと踏み込んで、気づいてくれた。
俺の気持ちを真っ直ぐ受け止めてくれた。
だから俺も君のその何も写してなさそうな瞳を変えたいって思ったんだ。
「怜香ー!宿題見せてーーー!!」
「またー?まぁ、いいけどさ。」
「さすがなんでも出来る怜香様だね。みんなの憧れの的だしね。」
「・・・・・・・うん、そうなのかもね。」
私は別にそんなの望んでない。
「よし。ありがとう!写し終わった!」
そういうのは私の唯一の親友の水島瑚春(みずしま こはる)。
瑚春とは高校1年生の時に同じクラスになって、心配性で泣き虫な瑚春をほっとけなくて話しかけたのがきっかけ。
いつもは元気なんだけど、ふとした時に心配になって泣き出す。
それに、お父さんが警察官でそれが影響しているのか怒ると凄く怖い。
そんな瑚春といるのが意外と面白いんだけど。
そんな裏表のない性格の瑚春のことが好きになって、今ではありのままでいられる大切な存在。
「はい。次からは自分でやってよ。」
「はいはーい。・・・・・怜香、大丈夫?疲れてない?」
私の前の席に座って瑚春が聞く。
「え?大丈夫だよ?」
「そう。ならいいけど。怜香はいつも無理するし。・・・・・・なんかあったら言ってね。」
「ありがとう。瑚春にはちゃんとなんかあったら相談するから。」
「うん。親友だもんね?」
そう言ってニコッと笑う瑚春。
なんでこんなに瑚春が私のことを心配してくれるかっていうと・・・・・
「あっ、怜香ちゃんだよ!凄いよねー。生徒会入ってて、成績も良くて。羨ましいー!」
「怜香ちゃんとこないだの模試全国100位に入ったらしいよ。ヤバくね?」
「ほんとにスタイルいいよねー。みんなの憧れって感じじゃない?」
「友達にも優しいし、こないだ私も相談にのってもらったんだー!」
廊下を歩けば周りからそう言われる。
私は別に何も凄くないのに。
成績が良いからってそんなに噂されなきゃいけないの?
本当はみんなが思うほど偉くなんてないんだよ。
親が・・・・・親が望んでいることを淡々とこなすだけ。
逆に私は周りのみんなが羨ましい。
今を楽しく、自由に生きられてる感じがする。
瑚春は私がこういう噂されるのが嫌いだって分かってるから、大丈夫って聞いてきてくれる。
周りのみんなは私のことを一目置いて見るけど、瑚春はそんな事しない。
「はぁー?噂なんて気にしないくていいじゃん!!怜香は怜香でしょ?まぁー、憧れの的って感じなのかもしれないけど私は別にそんなの気にしないし。・・・・それに、意外と怜香って抜けてるよねー。天然って言うのかな?私的にはそれがウケる!!」
とかって言ってる。
本当にその言葉が嬉しいんだ。
でも、友達だけじゃない。
私の通う高校は進学校って言われてるから、先生からも色々と言われる。
「おぉー!怜香!こないだの模試凄かったな。これからもよろしく頼むぞ。この学校の自慢だからなー!」
嫌だ。
そんなことばっかり言わないで。
私はそんな反応を求めているわけじゃない。
期待しないで・・・・・・
周りから何か言われる度私は自分の気持ちを言わないようになった。
最近は諦めて嘘笑いでもしていればいいんだって思うようになった。
私が微笑んでいればみんなの憧れの怜香になるんでしょ?って。
勉強も出来て、友達とも仲が良くて、生徒会でも活躍してて、完璧な憧れの的。
それが私に貼られたレッテル。
「怜香ーー!今日、放課後付き合ってくれない?」
お昼休みになって瑚春に言われた。
「いいけど、どこ行くの?」
「私の好きなバンドのCD買いに行きたいの!!もし暇だったら本とか見てていいからさ!!お願い!!」
私と瑚春は帰宅部だから放課後は図書館に行くか、瑚春のショッピングに付き合うって感じ。
私達が良く行くのは1階から5階まで本やCD、DVDが売っている大きなお店。
私は本を見て、瑚春がCDとか漫画とかを見るっていうのが多い。
「うん。いいよー。今日は塾もないし。」
「良かったー!私は明日が塾だから今日しか行けないんだよねー。んじゃ放課後よろしく!!」
瑚春がご機嫌で席に戻っていく。
なんかいい本があったらいいなー。
私は文系の大学を目指している。
周りからは理系を勧められたけど、本を読むのが好きだから文系にした。
だって本の中だったら周りの人に何も言われず、その世界に入り込めるでしょ?
私だけの世界を作れるって思うんだ。
私は午後の授業もしっかり受けた。
そして放課後。
「怜香!行こっ!!」
「そんなに急がなくても大丈夫だよー?」
「早く買いたいんだもん!!」
テンションの高い瑚春に手を引っ張られてお店まで来た。
「じゃあ私は本見てるからごゆっくりどうぞ。」
「ありがとう!!じゃあ後で!!」
そう言って階段を駆け上がっていく瑚春。
本当に大好きなんだなー。
私も何かいい本がないか見ようっと。
私は小説が置かれているコーナーに言って気になった作品を手に取っていく。
あっ、あれ面白そう。
見つけたのはいいけど、手が届かない。
つま先立ちになっても全然取れない。
すると横から手が伸びて私の取りたかった本当を取った。
「これであってる?はい。」
「あっ、ありがとうございます。」
差し出された本を受け取って、その人の顔を見る。
髪が茶色で私よりも背が高くて、何より・・・・・・・チャラい。
もしかして、不良?
「あっ、今不良とか思ったでしょ?全然大丈夫だから気にしないでよ。」
「えっ!?あっ、ごめんなさい。・・・・ありがとうございます。それじゃ。」
私はお礼だけ言ってその場を立ち去ろうとする。
でもその人は私の手を掴んで離さない。
「ねぇねぇ、もしかして近くの進学校の子?名前なんて言うのー?って言うかめっちゃ頭いいでしょ?」
急に始まったマシンガントーク。
今会ったばっかりの人に名前なんて言わないでしょ!?
しかもこんなに制服着崩してるチャラいやつに。
「怪しいんですけど。・・・・私に聞くより自分の名前言ったらどうですか?」
ちょっとだけ睨んで言うと男の子はびっくりした顔をした。