どうして君を好きになったんだろう

「ちょっと、不良に絡まれて。」


「えっ!?それって近くの不良校の人?」


「うん。でも、高いところにあった本を取ってくれたんだけど、その後遊びに行こーって言われて。周りからこそこそ言われたから逃げてきちゃった。」


「そっかー。でも、ちょっと怖いよね。」


帰り道、瑚春が考えるようにして話す。


「見た目だってチャラそうだし。なんかいいことしてもらっても周りからの評判みたいなのがあるから素直に喜べないっていうか。・・・・・近寄りがたい感じするな。」


「確かにね。まぁ、もう会うことはないからいいでしょ。それよりあの本買えなかったのが残念。」


「また買いに行こうよ。ね?」


「うん。明後日もう1回行こー。」


「いいよ。今度は私が怜香の買い物に付き合ってあげようじゃないか。」


ちょっと偉そうに言う瑚春。


「ありがとう。」


そう言うと私はさっきのことを思い出していた。


同じ高校生でも、全然違うタイプだな。


ちょっとだけ羨ましく思うけどね。


自分のやりたいように毎日生きてる人って感じで。
でも、初対面の人に遊ぼうなんて有り得ない!!


チャラすぎ!!


本取ってくれた時はいい人だと思ったけど、一瞬でイメージ崩れたな。


あーあ、最悪だ。


もうあんなチャラい人に会いたくない。


まぁ、会うこともないと思うけどね。


「あっ!?璻、お前なんでこんなところいるんだよー。探したんだけど。」


「ごめんごめん。ちょっとな。」


「ふーん。って言うかさっき誰と話してたの?」


「ん?ここの近くの進学校の女の子。」


「進学校!?お前馬鹿なのか!?そんな真面目ちゃんにナンパしても楽しくねーぞ!?」


「ナンパじゃねーよ。まぁ、遊ぼって言ったけど。」


「それがナンパって言うんだよ。馬鹿だなー相変わらず。俺も人のこと言えねーけど。」


さっきからごちゃごちゃ言ってくるのは親友の木崎遼(きざき りょう)。


中学の時からの仲で外見は俺よりもチャラい。


髪の色は金髪に近いし、制服だって俺より着崩してる。


でも、バカで元気で感動屋で友達思い。


高校に入った時、初めて話しかけてきたのが遼だった。


常に笑ってて、そんないつでも明るい遼に興味を持った。


仲良くなるのに時間は掛からなくて俺達は直ぐに意気投合した。


いつも楽しく過ごしたくてバカばっかりやってた。

勉強だって得意じゃないし、毎日を楽しく生きれればそれだけでいいと思っていたから。


遼とバカみたいに過ごせればいいって思ったから。


そして、高校に入ってから俺は茶色に髪を染めた。


それを見た遼も髪を染めた。


俺達の周りにもそういう奴はたくさんいたから学校の中では全然目立たない。


でも、1歩学校を出ればすれ違う人に指をさされ噂される。


別に悪いことなんてしてないのに見た目だけで判断される。


自分の好きな格好をして何が悪い。


「璻?なんか怖い顔してんぞ?」


考え事をしていた俺の顔が険しくなっていたのに気づいて遼が言う。


「・・・・・・・・・いや、ちょっと考えてただけ。」


「なんかあったら相談乗ってやるからよ。1人で・・・・・・あん時みてぇに1人で抱え込むなよ。俺はお前のことは裏切らねぇからよ。」


「あぁ。ありがとう。」


遼が言った、俺は裏切らない。


遼は俺が人を簡単に信じられないって知っている。

どうせみんな自分の利益のためなら人なんて簡単に裏切るんだ。


暗い気持ちになるのを振り切るように俺は頬を手で叩いた。


「つーかさ、俺ささっきの女の子に本取ってやったのに、最後やめてくださいって怒られたんだぜ。酷くね?」


「それは進学校のいい子ちゃんだし、見た目だろ?仕方ねぇーよ。」


「まーなー。でも、名前聞いちゃったんだよねー。また会えるかな?」


「えっ!?名前聞いたの?お前本当にそういうのは早いよなー。」


そう言って笑う遼。


「また会えっかなー。なんてな。」


「期待しないで待ってなよ。璻君。」


「お前こないだ振られたからって八つ当たりすんなよ。」


「なっ!?いつもお前ばっかりモテてんじゃん!?たまに腹立つわ!!」


遼がギャーギャー騒ぎ出した。


「はいはい。あっ、今日泊まっていい?」


「はいはいじゃねーよ!!まぁ、いいけどさ。」



「よっしゃ!じゃあお菓子買っていこーぜ。」


俺が走ると後ろから遼が追いかけてくる。


そう、俺らは毎日が楽しければいいんだよ。


周りの目なんか気にしない。


やりたいように毎日過ごすだけ。


友達がいればそれだけでいいんだ。

「怜香ー?今日塾なの?」


「うん。ごめんね。一緒に帰れなくて。」


「大丈夫!じゃあまた明日ねー!」


「うん。また明日!」


私は駅前の塾に通っている。


好きで行ってるわけじゃなくて親が決めただけ。


「こんにちはー。」


挨拶すると私は席につく。


5時から8時まで3時間びっしり行う。


周りにも同じ学校の人とか浪人生の人がいる。


「じゃあ始まめーす。」


私は眠いのを我慢してノートをとる。


やっと終わって帰ろうとすると講師の先生に呼ばれた。


「怜香ちゃん。ちょっといいかな?」


「はい。」


隣のフリースペースに行くとこないだの模試の結果を返された。


「今回の模試もいい結果だったよ。でも、もう少し上を目指すなら数学の成績を上げたほうがいいと思うな。まぁ、充分凄いんだけどね。」


「はい。分かりました。」


今回の模試は結果は良かったけど数学の点数をいつもより8点落としてしまったんだ。


「みんな怜香ちゃんに期待しているからさ。この調子で頑張って。」


「・・・・ありがとうございます。」


私はそう言って部屋を出る。

またか。


期待している。


余計なプレッシャーばかりかけられる。


私は大きくため息をついて塾を出た。


先生と話していたからかいつもより帰りが遅くなってしまった。


スマホを見ると9時。


急いでバス停に向かおうとするとその近くにいる不良らしき人達。


なんか怖いんだけど。


でもそこを通らないとバス停まで行けないし・・・・・


私は覚悟を決めて歩き出した。


横を通り過ぎようとした時、


「へー、こんな時間に進学校のいい子ちゃんがいるよ。」


「本当だ。珍しくね、この時間にここ歩くなんて。」


そう言って私の周りを取り囲む。


「あの、私帰りたいので避けてください。」


「意外と可愛いじゃん。ねぇー、今から遊ぼうよー。」


そう言って手首を掴まれる。


振りほどこうとしても全然離れない。


怖くなって泣きそうになると突然バキッと音がした。

「痛ったっ!!誰だよ!!」


「お前らこそ何してんの?」


そう言ったのはこないだのチャラい人。


「げっ!璻かよ。お前何すんだよ。せっかくいい所だったのによ。」


「その女の子、俺の知り合いなんだよねー。だからやめてくれるかな?」


ニコッと不適に笑うと、周りにいた不良達がそそくさと逃げて行く。


「あの・・・・・・・・・ありがとう。」


私がそう言うと突然私の手を取った。


「えっ!?なに!?」


「・・・・・怪我してねぇよな?よし。大丈夫か。」


「あっ、大丈夫。」


「つうかこんなところで何してんの?家出とか?でも、いい子ちゃんはしないか。」


そう言ってバス停近くの公園に入っていく。


私はいい子ちゃんって言われるのにムカついて男の子の後ろを歩いていった。


「いい子ちゃんって言わないで。そう言われるの嫌なの。」



「へー。やっぱりお前変わってるよ。えーっと名前なんだっけ?んーと、あっ、怜香だっけ?」


「うん。そうだけど。えっとーー、」


「俺は璻。名前ぐらい忘れんなよ。」

どうして君を好きになったんだろう

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