奏汰君は……、今日は静かな気がした。


「奏汰、どうしたのよ?体調悪いの?」


「あー、考え事してたや…」


紗彩の口調はまるで母親のよう。


なんか微笑ましい。


バスに乗って、一番後ろの三人席に座った。


今日は人が少ない。


むしろ貸切って感じ。


「あ、ほんじゃお先〜」


紗彩が降りると、沈黙が訪れた。


「あ、あのさ…」


それを破ったのは奏汰君だった。


「ん?」


顔を見ると、すごい真剣な顔だった。


「どうしたの?」


「芽衣ちゃん……その…俺の彼女に……なってくれませんか……」


……





!?


「え…」


「付き合ってくださいっ」


小さな声で、ぴょこっとお辞儀をした。


「……」


どうしよう…


私も言いたい。


奏汰君へ…


二文字の私の気持ちを……


けど……


「ちょっと……考えても…いい?」


こう答えるしかなかった…


そう言った瞬間、バスが停まった。


「ならまた……返事…聞かせて欲しいな……」


そう言って、バスを降りていった。