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 俺は薄っすら目を開け、遠くなっていく矢崎の後ろ姿を見つめた。


 唇に残る、しょっぱい味は彼女の涙だろう……





 大阪から東京へ赴任してきたのは数か月前だ……

 赴任初日は、挨拶やら新しい企画チームの立ち上げ準備に追われ、一息つくため自動販売機から缶コーヒーを買った。


 窓際に立ち、何故かほっとしている自分に驚いた。


 東京への赴任が決まり、付き合っていた彼女亜由美に結婚をじわじわと責められていた。

 もう、大阪へ戻る事は無いと悟った亜由美の気持ちも分からないでは無い。

 亜由美はいい女だと思う。

 しかし、亜由美との結婚に踏み切れない。

 結婚話を濁らせ、東京へと来てしまった。


 だが、亜由美との距離が出来た事にほっとしている自分に気付いてしまったのだ。