小山さんからは、連絡があれば会うようにしていた。

 一人でいるよりはマシな気がしたからだ。

 小山さんの行動が気になりだしたのは、一か月程経ってからだった。


 マンションの現場へ向かうと、小山さんの姿は無く、一緒に飲んだ職人二人が黙々と仕事をしていた。


 現場代人の佐藤さんに、何気に小山さんの事を聞いてみた。


「小山? 又、サボりだよ。そこら辺のパチンコ屋にでも居るんじゃないのか?」


「えっ」

 私は驚きのあまり声を上げてしまった。


「あいつ、他の奴と違って不真面目でなぁ。そろそろ、親方もケジメ着けるんじゃないか。何か用事でもあった?」


「い、いえ別に……」

 私の不穏な返事に、佐藤さんが首を傾げたのが分かった。


 私は、現場の帰りに、小山さんのアパート近くのパチンコ屋を覗いた。

 赤くチカチカと光るパチンコ台の前に小山さんの姿があった。


 タバコの匂のキツイ店内に足を踏み入れた。


「何しているの?」


「ああ、美羽ちゃん! みてよ、フィバーしちゃってさ」

 何の悪びれもせず、小山さんは笑顔で答えた。


「仕事は?」


「腹痛くて休んだ」


 嘘だとすぐ分かった。

 この人、最低な奴かも……


 私は黙ってその場を離れようと歩き出した手を小山さんが掴んだ。


「いいじゃん、一緒にやって行こう?」

 屈託のない笑みを見せた。


「まだ、仕事残っているから……」


「俺より仕事かよ!」

 面白くなさそうな顔を私に向けた。


 最悪の言葉を聞いた気がした。