マンションのモデルルームも順調に進み、課長と現場から会社へと戻った。


 企画部のドアを開けると、別の企画チームの打ち合わせに、初めて見る長い黒髪の綺麗な女性が加わっていた。

 振り向いたその女性と課長の目が合った。


 課長の目が明らかに変わった……

 嫌な予感が脳裏をめぐる……


 一瞬の事だったのに、二人の無言のやりとりを感じとってしまったのだ。

 こんな時ばかりは、自分の観察力を恨みたくなる……

 
 何事も無かったように、課長は自分のデスクに座りパソコンを睨む姿は、いつもと変わらなかった。


 私は、チラリと彼女を見る。

 テキパキと仕事を熟すオーラが溢れている。スタイルの良さといい、私とは別世界の人だ……


 打ち合わせが終わった女子社員に、つい聞いてしまった。

「あの女性、どこの人?」


「ああ、大阪支店の企画部の木島亜由美さんよ。凄い美人よね……」

「へぇ―」

 気にしている事がバレないよう、さらっと返事を返した。


 大阪支店…… 

 益々嫌な予感に胸が押し付けられる……


 課長が知らない人の訳がない……



 気になり出したら、どうにも止まらなくなってしまった。