ポッと顔を赤らめ、何度も瞬きを繰り返すアデルに、セドリックはふふっと声を漏らす。


「つれないな、アデルは。僕はドレスを着た君を見た瞬間から、息が止まりそうなほど緊張してるのに。君ときたら、どこまでも無自覚で無防備で。……自分がどんな目でみんなに見られてたかなんて、考えてもいなかっただろ」


どこか拗ねたようなセドリックの口調に、アデルはぎょっとして慌てた。


「や、やっぱり私、こんな格好、おかしい!?」

「え?」

「みんな気を遣って拍手してくれたけど、私、普段が普段だし、今は髪もこんなだし、やっぱり……」


本気で焦って身を縮ませるアデルに、セドリックは何度も目を瞬かせた。
そして、大きな溜め息をついてガックリとこうべを垂れる。


「ほんと……無自覚って最強の武器だな」


セドリックのボヤくような小さな声に、アデルは黙り込んでそっと彼を見上げた。
セドリックはアデルの瞳を見つめ、グッと唇を引き結んだ後、彼女の腕を掴み自分の方に強く引き寄せた。


「あっ……!」

「ほらね、無防備」


からかうようなセドリックの声を耳元で聞いた時、アデルは彼の腕にすっぽりと抱き締められていた。
頬に感じるセドリックの体温に、アデルの胸がドクッと大きな音を立てて跳ね上がる。