(私ったら……! こんな時でも自分のことばっかり……)


心の中で自分を責めるアデルに気付いてかどうか、セドリックはクスッと笑うと、彼女の手を引いてバルコニーに続くドアの方へ誘った。


「アデル、こっちに」


早口でコソッと耳打ちするセドリックに、アデルは胸をドッキンと弾ませた。
セドリックは彼女の腕を引き、「早く」とバルコニーの方に大股で進んでいく。
アデルは彼に腕を取られたまま、逆側の手でドレスの裾を持ち上げ、小さな歩幅でパタパタと小走りでついて行った。


大きな格子窓のドアを開けアデルをバルコニーに連れ出すと、セドリックはふうっと肩を動かして息をつく。
そんな彼に、アデルはどこか不安げな目を向け、『ごめんなさい』と謝った。


「セディ、怪我が痛むのなら、もう部屋に戻った方が……」


半分縋るように訊ねると、彼はきょとんとした目をアデルに向けた。


「なんで? 大丈夫だよ」

「え? だって……」


いつもと変わらない様子のセドリックに、アデルの方が戸惑いながら声を尻すぼみにした。
そんな彼女に、セドリックは目を細めて微笑む。


「剣を振ってるわけじゃないんだから。もうそんなに痛まないよ。ただ、アデルと二人きりになりたかっただけ」

「えっ……?」