ダンスは好きでも、これほど豪華なドレスを着て踊る機会はほとんどなかったアデルを、無理なく誘導してくれる。
セドリックのステップは、華麗でスマートだ。
まるで吸い寄せられていくようで、それでいて心地よい距離感を保ってくれる。


そのおかげでアデルも、二曲目では自分からステップを踏んで誘導して、セドリックを苦笑させるほどの余裕を見せることができた。


誕生したての初々しいロイヤルカップルの初ダンスを、周りで踊る他の貴族も、召使いや騎士たちもみんな優しく見守っている。
そうして三曲ほど踊った後、セドリックが足を止めた。


「え?」


次の曲のステップを踏みかけていたアデルは、急な休止についていけず、彼の肩口にトンと額をぶつけてしまう。


「セ、セディ?」


思わず額に手を遣りながら呼びかけると、彼は唇に人差し指を当て、『しっ』とアデルを制する。


「ちょっと疲れた。……少しだけ休みたいな」


内緒話のように耳元で囁くセドリックに、アデルはハッと我に返った。


ずっと夢見心地な気分で、セドリックの怪我がまだ完全に癒えていないことをすっかり忘れていた。
それを思い出して慌てて、アデルは大きく何度も首を縦に振った。