よく知る人たちからの慣れない反応に戸惑いながら前を向くと、セドリックがゆっくり近付いてくるのが見えた。


「セディ」


彼が微笑みかけてくれるだけでホッとして、アデルは小走りで駆け寄る。
セドリックの前でピタリと足を止めて見上げると、彼はほんのり染まった頬を隠すように、顔に大きな手を当てていた。


「セディ? お待たせ……」


首を傾げながら声をかけるアデルの前で、セドリックは「はあっ」と声に出して大きな溜め息をつく。
それを聞いて『やはり似合わないか』としゅんとしかけたアデルの手を、セドリックが強く引いた。


「え? セディ!?」

「ダンスを始めよう。楽団員、ワルツを! あ~とにかく明るければなんでもいい!」


セドリックは割と適当な命令を凛とした声で放った。
それに慌てた楽団長が、タクトを持ったまま楽譜を捲る。
やがて、一際明るく軽やかな曲の演奏が始まると、広間のダンスフロアに王家やそれに準ずる貴族たちが、互いのパートナーと手を取り合い進み出てきた。


アデルたちの目の前で、明るく華やかなダンスが繰り広げられる。
セドリックもアデルと同じようにその様子を眺めた後、彼女に視線を落とした。
そして、ひょいっと肩を竦める。