再び広間に現れたアデルの姿に、王族も騎士も召使いたちも、一瞬ほおっと息をついた。
その為、その間広間は静まり返ってしまい、アデルは不安げに自分の姿を見下ろす。


ライアンが用意した薄桃色のドレスは、セドリックの誕生パーティーで着た物より、数段豪華だった。
大きく開いた胸元は、コルセットで締め上げられ隆起している。
レースやリボンがふんだんに使われたスカート部分は二枚重ねになっていて、下に着けたパニエの効果で横に大きく広がっている。
今までのどんなパーティーでも、こんなに豪華なドレスを着た姫君を、アデルは見たことがなかった。


王家のパーティーでダンスをしたことはないが、このドレスなら決しておかしくはない、とアデルも思う。
おかしいと言えば、貴族の女性らしからぬ、短く不揃いな髪だけ。
それも、召使いたちが苦労して手を入れ、みすぼらしくない程度に纏めてくれた。


しかし次の瞬間、彼女の不安をよそに、広間中から割れんばかりの拍手が起こった。


「アデル様! なんてお美しい……!」


すぐ近くから、顔見知りの召使いたちが叫ぶのが聞こえた。
辺りを見渡すと、いつも剣を交えている仲間の騎士たちが、ポーッとのぼせたような顔で自分を見ている。