「えっ……!? え、ちょっと待って……!!」


ほとんど担ぎ上げられた状態で連行され、アデルは慌てて声をあげた。
セドリックは苦笑したままアデルを見送り、隣に並ぶライアンをそっと肩でつつく。


「……『とびっきりの美女』って命令は、おかしくないか?」


それを聞いて、ライアンがわずかに眉を寄せた。


「無理だと思ってるなら大間違いだぞ、セディ。アデルはあれでもアシュレー侯爵令嬢で、俺の妹なんだから、着飾れば……」


憤慨するライアンに、セドリックは軽く吹き出して笑う。
そして、「違う違う」と肩を揺らした。


「わざわざ命令して美女に仕立て上げなくたって。アデルはもともと最高に綺麗なんだから」


召使いたちに囲まれて広間から出て行くアデルを目を細めて眺めながら、セドリックはシレッと言い放った。
『当然』と言うようなセドリックの言葉に、ライアンはガックリとこうべを垂れる。


「……恥ずかしげもなく惚気るくらいなら、ちゃんと素直に本人に褒めてやればいいのに」


ジトッと横目で睨むライアンに、セドリックは肩を竦めた。
そして、唇を軽くへの字に曲げる。


「……なまじ昔から知ってるだけに、僕だって面と向かって『可愛い』って言うのは、照れ臭いんだよ。言ってやれないのは、ライアンも同じだろ」


耳を赤らめて照れるひねくれ者の王太子に、ライアンはクッと肩を揺らして笑った。