アデルは掠れた声を漏らしながら、もう一度、今度はしっかりと頷いてみせた。
涙で濡れた瞳を上向け、泣き顔のまま、今浮かべられる最高の笑顔をセドリックに向けた。


「セディ……私もあなたを愛してます」


セドリックの蒼い瞳を真っすぐ見つめ、彼と同じ真摯な想いを返す。


返事を聞いてホッとしたように表情を和らげると、セドリックはアデルの赤く染まった頬にそっと手を添えた。
首を傾け、彼女の滑らかな頬に優しく唇を触れた、その途端――。


王宮楽団のクラレータ奏者が、けたたましく明るいファンファーレを吹き鳴らした。
セドリックもさすがに驚いた様子でアデルから唇を離し、サッと周りに視線を走らせる。


「セドリック様! アデル様! おめでとうございます!!」


彼が目を向ける先々、広間の至る所に配置されていた騎士たちが、祝福の言葉を声高らかに叫んだ。
忙しく動き回っていた召使いたちからも、『わあっ』と大歓声が湧き上がる。


セドリックにつられてアデルが辺りを見回すと、彼らが打ち鳴らす盛大な拍手で、広間が揺れたような気がした。
戸惑いながら顔を上向けるアデルに、セドリックは照れたようなはにかんだ笑顔を見せる。