彼の言葉に困惑しながら首を傾げた途端、アデルはそれを思い出した。
カッと頬を赤らめて、反射的に自分の首筋を押さえてしまう。


彼女の仕草を見て、セドリックは意地悪にフッと口角を上げた。


「あれ。アデル、気付いてた?」

「だ、だってクレア様が……!」

「ああ……だからあの後会った時、君の様子がおかしかったのか。ふふ。ごめんね、アデル。でも……」


セドリックはアデルの思考をすべて見透かし、悪びれずに謝ると、一度言葉を切った。


「おかげで、城に帰って来る頃には確信できた。僕が恋焦がれた姫君は、やっぱり君だってね」


セドリックは目を細めて魅惑的に微笑むと、ほんのわずかに躊躇いながら、アデルの髪に手を伸ばした。
不揃いな短い髪を揺らす指先に視線を落とし、彼はどこか寂しげに瞳を曇らせる。


「僕が探していたプラチナブロンドの髪にエメラルド色の瞳の姫君は、ずっと僕のそばにいた。……アデル、最初に会った時に気付けなくて、ごめん」


そう言って、セドリックはアデルの髪からゆっくり手を離した。
肩に降りかかる感覚はない。
アデルは反射的に髪に手を遣り、不揃いでみっともない毛先を隠そうとした。
しかし、セドリックが、アデルのその手を掴み取る。


「アデル、君の僕への忠誠の証なんだろ。隠さないで」


静かに穏やかにそう言われ、アデルはそっと目を伏せた。