しかし。


「それなら、アデル。僕は、君の忠誠に生涯の愛を誓おう」


セドリックはそう言うと、アデルの額にそっと口付けた。


「セ、セディ……!?」


アデルがギョッとしてひっくり返った声をあげた。
何をされたかわからず呆然と額を押さえる彼女を、セドリックは上目遣いで見つめクスッと笑う。


二人から一歩離れて見守っていたライアンが、彼女に呼びかけた。


「アデル。今夜のパーティー、お前以外に招待客はいない。『王太子が瀕死の怪我を負った』って、事故の翌日には、各国に向けて中止の触れが出てるんだ」

「……え?」


ライアンの説明を聞いても、アデルは戸惑った様子で視線を宙に彷徨わせている。
セドリックは姿勢よく背筋を伸ばし、美しいサファイアの瞳を細め、アデルに微笑みかけた。


「怪我の功名……ってヤツじゃないけど、結果的に、招待客は君一人になってしまった」


セドリックが惚けた様子で、ライアンの続きを引き取り説明する。
アデルの視線は、セドリックの顔の上で止まった。


「わ、私……?」

「僕は君を口頭でパーティーに招待した。だけどドレスの君には無理だと言われたから、僕はアデルに警護に就くよう頼んだ。……どっちの姿でもいいけど、このパーティーにアデルが来てくれないと、僕が困ることになったから」