「先般の事故……私の不用意な行動で殿下を危険に晒し、大怪我を負わせてしまったこと、心より……心よりお詫び申し上げます」


アデルの騎士然とした口上に、セドリックはゴクッと喉を鳴らした。
ライアンは二人の様子を固唾をのんで見守っている。


「お詫びしてもしきれません。ですから……私にできることは、殿下への忠誠を身をもって表すだけ。……王太子殿下」


アデルは一気にそう言い切り、セドリックの澄んだ蒼い瞳を見上げた。


「私は一生……殿下にお仕えします。これまで以上に精進して、必ず立派な騎士になります。だから……お願い」


口上の途中で、アデルの声は震えた。


「あなたのそばにいさせて……」


声を尻すぼみにした彼女の瞳から、一筋涙が零れる。


セドリックは強張った表情でアデルを見つめていた。
彼女の声が消え入るのを聞いて、ギュッと目を閉じ、小さく唇を動かす。


「忠誠、って。……だから髪を切ったのか?」


そう問われ、アデルは黙って俯き、一度首を縦に振って応える。


「……バカだな、君は」


セドリックはやるせない様子でそう呟くと、アデルの腕を強く掴み、引っ張るように立ち上がらせた。
普段の彼らしくないどこか強引な行動に、アデルだけでなく、傍らで見守っていたライアンも大きく息をのむ。