「そんなことより、アデ……」
「ねえ、パーティーは? もしかしてセディに何か……」
求める答えを返さないライアンに焦れ、アデルは彼の両手を払いのける。
その時、二人の背後に人が近付く気配がした。
同時に、凛とした声が広間に響く。
「アデル、こんばんは。君が来るのを待っていた」
アデルの焦りとは真逆の、落ち着き払った明るい声。
アデルはハッとして声の方向に顔を向けた。
ライアンも彼女と同じ方向に目線を流している。
「……セディ?」
アデルとライアンが見守る中、真紅の絨毯の上をまるで足を滑らせるように、セドリックが優雅に歩み寄ってくる。
濃紺の膝丈の上衣にヴェスト、細身のキュロット。
首に巻いたクラヴァットはふんわりと柔らかく結んである。
そして肩から纏った緋色のマントは、昨夜アデルが騎士見習いの少年を介して返した物だ。
それらを身に着けたセドリックは、怪我をしているとは思えぬほどしなやかで堂々としていて、一国の王太子としての気品が溢れ返っている。
(よかった……セディの身に何か起きたわけじゃなかったんだ……)
見た目では普段と変わらないその姿に、アデルがホッと息をついたその時――。
「っ……アデル!?」
セドリックの方が声を詰まらせ、険しく表情を歪めた。
「ねえ、パーティーは? もしかしてセディに何か……」
求める答えを返さないライアンに焦れ、アデルは彼の両手を払いのける。
その時、二人の背後に人が近付く気配がした。
同時に、凛とした声が広間に響く。
「アデル、こんばんは。君が来るのを待っていた」
アデルの焦りとは真逆の、落ち着き払った明るい声。
アデルはハッとして声の方向に顔を向けた。
ライアンも彼女と同じ方向に目線を流している。
「……セディ?」
アデルとライアンが見守る中、真紅の絨毯の上をまるで足を滑らせるように、セドリックが優雅に歩み寄ってくる。
濃紺の膝丈の上衣にヴェスト、細身のキュロット。
首に巻いたクラヴァットはふんわりと柔らかく結んである。
そして肩から纏った緋色のマントは、昨夜アデルが騎士見習いの少年を介して返した物だ。
それらを身に着けたセドリックは、怪我をしているとは思えぬほどしなやかで堂々としていて、一国の王太子としての気品が溢れ返っている。
(よかった……セディの身に何か起きたわけじゃなかったんだ……)
見た目では普段と変わらないその姿に、アデルがホッと息をついたその時――。
「っ……アデル!?」
セドリックの方が声を詰まらせ、険しく表情を歪めた。