ライアンの言い間違いを鵜呑みにして、セドリックへの反抗心を胸で沸々させたまま、狩猟までの一週間、アデルは普段の訓練の合間を縫って槍の特訓を続けた。


そして迎えた狩猟当日。
満月が夜空を照らし、いつもの夜より明るい月明かりが地上に注ぐ中、アデルは夜明け前から起き出し、猟犬や武器の確認に回っていた。


早朝からの狩猟では、専門の猟師が猟犬を従えて獲物を探している間に、主君が朝食をとって待つことになる。
厨房では狩猟隊の人数分の大量のパンやワイン、簡単なスープが用意されていて、それを運び出すのはいつもアデルの仕事だった。


しかし今日は違う。
勢子の役目を務める数人の騎士や見習いたちが、手分けして食料を荷馬車に積み込むのを横目に、アデルはセドリックが乗る馬の準備をしていた。


出発の用意がすべて整った頃、主塔の前に国王を始めとする男性王族たちが姿を現した。
今日、ライアンは第一王子であるニールの従者として供に就くことが決まっている。
アデルは自分の馬とセドリックの愛馬の手綱を両手に持ち、彼に近寄った。


「おはよう、アデル」


アデルが声をかける前に、セドリックの方から明るい声で挨拶をしてきた。