「何よ、それ……私はセディに匙投げられるほど、女らしさがまったくないってこと……?」


アデルがわなわなと身を震わせるのを見て、ライアンは軽く焦った。


「いや、アデル。俺が聞いた時、そこまで酷いこと言ってる気はしなかった。だってアイツ、アデルのこと守るって……」

「いいわ、もう結構! わ、私はどうせ騎士になるんだから、考えてみたら、セディに女だと思わせる必要なんかないの!」


憤慨したアデルが、頬をプクッと膨らませてそう怒鳴る。
ライアンは更に焦りを強めた。


「ちょっと待て、アデル。俺の言い方に語弊があったのかも。こうなったら、いっそこれから、お前もセディのとこ一緒に……」

「見てらっしゃい。来週の狩りのお供は完璧に務め上げて、セディの方から『叙勲式は僕にやらせて』って頭下げさせてやるんだから!!」


完全に頭に血が上ったアデルは、怒り心頭の様子で吐き捨てるように言い放った。


「あ、おい、アデル……」


「お休みなさい、お兄様。明日も特訓よろしくねっ」


ライアンが呼び止めるのも聞かずに、アデルはプリプリしながら自室に向かって行ってしまった。