(う、嘘でしょ!? だってもしそうだったら、昨夜熱い口付けを交わした相手が私だって、セディは気付いてるってことで……!)


今更、訓練場での彼とのアクシデントを思い出し、アデルの顔が火を点けたようにボッと真っ赤に染まる。
一気に混乱に陥りそうになり、無意識にライアンの両腕にしがみついてしまった。


しかしライアンは、カラカラと豪快に声をあげて笑い、アデルの焦りを一蹴する。


「あ、それはないだろ。だってアイツ、ついさっきアデルのこと、『女だけどちっとも女らしさは感じない』って言ってたから」

「……え?」

「別に女らしいことアデルにできなくてもいいけど、自分が国王になっても、女らしくしろって命令はできないから、お前の意志に委ねた、とか。……あれ? なんか俺が言ってみるとちょっと……」


ライアンは、セドリックの言葉を繰り返して伝えたつもりだったが、最初の一言の順番を間違えたが為に、自分が聞いた時とは印象が違うように感じた。
そして、彼はそれに気付いていない。
何が違うんだ?とばかりに、言葉を切って首を傾げる。


ところがアデルは、ライアンが言ったそのままの印象で、セドリックの言葉を受け取ってしまった。