「で、でもお兄様。昨夜の私は、セディが恋焦がれる姫君の姿だったのよ? 考えてみたら、まったく女の武器がないってことも……」


とにかく無性に悔しくて、アデルはムキになって唇を尖らせた。
ふて腐れた気分で胸の前で腕組みをするアデルに、ライアンがハッとしたように大きく息をのむ。


「アデル、それだ……!」

「え?」


今度は急に何かに合点したように、ライアンは大きくポンと手を打った。
突如頭の中で何かを閃かせたライアンのテンションにわずかに怯みながら、アデルは眉をひそめて聞き返した。


「アデル。落ち着いてよく聞け。恐らくセディは……お前にあの姫君の姿を重ねて、混乱してるんじゃないかと思う」


ガシッと肩を掴み、真剣そのものの眼差しで覗き込んでくるライアンに、アデルはきょとんとして何度も瞬きを繰り返した。
彼の言葉を自分の中で嚙み砕き、そこから彼女が導き出した結論は、兄の言葉のニュアンスとは異なるものだ。


「ちょ、ちょっと待って! それってつまり、重ねてるんじゃなくて、バレてるってことなんじゃないの!?」


自分が出した結論に焦り、アデルは上擦った声で叫んだ。