そして、『なあ』とどこか遠慮がちに声をかけてくる。


「何? お兄様」


アデルはぎこちないとわかっていながら、精いっぱい笑顔を浮かべてライアンに聞き返す。
それを聞いて、ライアンは一度ゴクッと喉を鳴らし、意を決したように表情を強張らせた。


「お前……昨夜セディになんかしたか?」

「は?」

「あ、いや。だから、その……女の武器を使うようなこと」

「……は?」


ライアンは、自分でも戸惑いながら訊ねてくるが、アデルは一瞬にして不快な思いを強めて眉を寄せた。
聞き返した声には、軽蔑したような色が滲んでしまう。
しかし彼女は大きく深呼吸をして、一瞬胸に湧いた怒りを抑え込んだ。


「お兄様。何が言いたいのかわからないけど、私には剣以外の武器はないわ」

「そうか。……うん。そうだよな」


自分に言い聞かせるように頷きながら、ライアンはグシャグシャと髪を掻き毟る。
兄のその反応には、アデルも地味にムッとした。


(何よ、それ! なんでお兄様がそこで納得するのよ。『そんなことないよ』って言うのが普通じゃない!?)


微妙にプライドを傷つけられた気分で、アデルは口をへの字に曲げた。