セドリックは細めた瞳で天井を見据え、彼自身、何かを吹っ切ったかのように、大きくハアッと息をついた。


「アデルの忠誠を試す為だけに、アイツが死ぬほど怖がる狩りに連れ出すのか?」


ライアンはセドリックの仰け反った喉元を見つめながら、そう訊ねていた。
天井を見上げたままのセドリックの喉仏が微かに上下するのを、ライアンは見守った。


「……やめてくれないか」


自分でも躊躇っているとわかっていながらそう言い切り、ライアンはセドリックから目を逸らして足元を見下ろした。


セドリックの言葉の端々に、彼がアデルに向ける想いが、見え隠れしている。
しかしセドリックは掴み所がない。
決して鋭いとは言えないライアンには、彼の本心は薄いヴェールに包まれてしまい、輪郭すら曖昧だ。


それでも、兄として妹を思う気持ちを前面に出し、ライアンはセドリックに懇願していた。
しかし。


「二言はない」


セドリックの返答は、冷酷と思うほど素っ気ないものだった。
「セディ」と思わず畳みかけたライアンを、セドリックは軽く手で制した。


「でも、大丈夫。アデルは僕が守る。今度の狩りだけじゃない。……騎士として仕えてくれるようになっても、僕が、ずっと」


セドリックは躊躇うことなくそう言った。