「陽希の弟……優希のことは、聞いてる?」




静かに頷くと、目を伏せたお父さんが思いの丈を明かしてくれた。




「優希が亡くなったあと、陽希がいるにも関わらず、僕たち親はずっと沈んだままでね。家事や仕事も、ままならない状態で。1度どん底に落ちたと言っても過言ではないよ」




朋也を亡くしたあたしは、そのことがよくわかる。



人を失くした痛みは、簡単には消えてくれないの。




「そんなとき、陽希が僕たちを支えてくれたんだ。必死に笑わせようとしてくれたり、見えないところで家事を頑張ってくれてたり……。
陽希だって、部活や勉強で忙しかったはずなのにな……っ」



「陽希は元々そこまで明るい子じゃなかったの。いつも笑顔であんな風に明るいのは……たぶん、私たちのため。情けない親よね……っ」




申し訳なさそうに俯くご両親。



……何か、違う気がする。


きっと陽希は、謝られたいわけでも、申し訳ない気持ちを持ってもらいたいわけでもないはず。



少し考えたあたしは、口を開いた。