西館も全て見終わり、僕らは水族館を出た。
時刻は夕方近くになり、空は水色とオレンジ色の境目を通っている。
「はあ……。あっという間に時間が過ぎちゃいましたね」
「そうだね。こんなので良かった?」
「はい、十分です。ありがとうございました。とっても楽しかったです」
僕の少し前を歩いていた副崎は、僕に向かって深々と礼をする。
力になれたみたいで良かった。
だけど……。
「なあ副﨑」
「なんですか?」
「どうして、水族館に連れて来てなんて言ったんだ? 行ったことないと言っていたけど、それだけが理由じゃないだろ」
僕は、副崎を恐縮させないくらいに重々しい口調で尋ねた。
最後までどうしようか迷ったが、やはり他の理由があるのならはっきりと聞いておくべきだ。
「うーん……、やっぱり言わなきゃ駄目ですよね……」
「副崎……」
副崎はこちらへと歩み寄ってくる。
そして僕の方に顔を近づけて言った。
「先生、ちょっと散歩しませんか?」
「えっ? いいけど……」