俺は夢を見ていた

目の前には幼い時の俺と白い女性の幽霊がいた

二人は楽しそうに話していた
俺が遠くでそれを見ていることに気付かずに…いや、俺はここには存在していないのだろう

この風景は俺も覚えている

夕日が沈みそうになる暗い空、微かに明かりがつく蛍光灯付きの電柱のした

俺があのくらいの時に、彼女にあっていた

しかし名前が思い出せない

顔は?声は?性格は?

何も思い出せない

あの人は誰?

俺はあの人と何を話していた?

何もわからない

何も思い出せない

何故忘れてしまったのだろう

疑問と疑問が俺の心を押し潰そうとする

その時

俺の首もとがひんやりした

背筋が凍る…そんな嫌な方の表現ではなく
どこか…心地良い

いつまでもこの感覚が続けばいいとさえ思うほどに…

その冷たさが顔に移った時

俺は目を覚ました




















もう夕方なのだろうか
青かった空は茜色に表情を変えていた

けっこうな時間、俺は寝ていたのだろうか

しかし今の俺にはそんな考えが出来るほど思考が働かなかった

それは

目の前にいる

見たことのない少女が

俺の視界いっぱいに映っていたからだった






「あ…起きた」