夏休み前の暑い日

休日を利用してわざわざ関西から親戚のおじさんが遊びに来ていた

おじさんは少年の心を忘れない…いや、子供は心、姿はおっさんな人だ
気まぐれにとんでもないことをしたりする茶目っ気溢れる人だ

そんなおじさんがなんでも今回は大事な用事を抱えてこっちに来たらしい

今度は一体何をしでかしたのか…

俺は不安と少しある期待を膨らませ父母と共に話を聞いた

「いやね〜、今回はたいしたことではないんだよ」

頬を掻きながら笑顔を見せるおじさん

「今度は何したんだ?アニキ」

父は自分の兄(おじさんは父の兄なのだ)をやらかしたことに不安を隠しきれていなかった

「それがね」

おじさんはさらりと言った

「家を買った」



……………………



そりゃあもう静かだった

静かすぎて笑いが出そうになったが父母の固まった顔を見てると笑うことはできなかった

「家を!?」

数十秒の沈黙の中、父が出した当たり前の言葉

「いや、値段は安かったんだよ、リーズナブル」

「だからって買わなくても…家だぞ?」

「友達の高橋さんが見つけた穴場でね、けっこうここから近いんだよ、ほら、あっちの大型スーパーの近くの」

その場所は確かに近かった、ここから10キロ㍍も離れていない
値段も確かに安かった、安すぎた

「…んで?引っ越すのか?そっちに」

父が呆れたように呟く

「いや…問題はそこなんだよ」

おじさんは今日初めての苦笑いを浮かべた

「どうした?」

「なんでもなぁ…いや、買った後に言われたんだけどさ…出るんだと」

「出る?何が?」

「幽霊が………」


………………………


本日二度目の沈黙…

「マジで?」

ア然とした父の変わりに俺が聞き返した

「あぁ…なんでも前に住んでいた人がそこで呪い殺されたとか」

キャアと母が悲鳴をあげる

「あはは、それは嘘嘘♪」

おじさんはお茶目な人だ

「じゃあどうするんだ?」

表情が直った父が仕切りに聞いてきた

それはそうだ
せっかく買ったのにそんないわくつきじゃ住みにくいことこの上ないだろう

「そうそれ、だから俺は考えた」